*当サイトはアフェリエイト広告を利用しています。
社労士

管理職になったのはよいのだけど、部下がいない・・本当に管理職なの?【スタッフ管理職の考え方】

紙にマネージャー 社労士
当サイトはアフェリエイト広告を利用しています。

会社での管理職とは、だいたいイメージとして部長、課長などでしょう。
では、課長などのラインにいる管理職ではなく、ライン外の管理職で、部下等を持たない管理職、いわゆるスタッフ管理職も実際管理職に含まれるのでしょうか?
労働基準法の管理監督者の定義からみると、ぎり、課長までは含まれそうですが、部下なし管理職はどうなのでしょうか?
と考えたことはないでしょうか?

そこで、社会保険労務士である私しま丸ねこが、労働基準法に絡め、スタッフ管理職について、解説していきます。

この記事を読むとスタッフ管理職のことが理解できるようになります。

この様な方へ向けて、参考になれば
・部下なし管理職(ライン外管理職、スタッフ管理職)について知りたい方
・管理職になったけど、部下がいないのに本当に管理職なのか知りたい方
・そもそもスタッフ管理職の定義を知りたい方

 

黒ねこ
黒ねこ

最近、管理職となったのだが、別に課長でもないし、部下もいない。
でも残業代はつけられなくなった・・・
この様な部下なしのスタッフ管理職でも管理職なのかなあ??

しま丸ねこ
しま丸ねこ

そうなんだあ~?! 今回はその辺のこと、「部下なし管理職、いわゆるスタッフ管理職」について、解説するよ!

部下なし管理職(スタッフ管理職)は管理職である、又はない(?)

昭和63.3.14.基発150号、昭和52年2.28.基発104号の2、105号の通達に、
(銀行内において、)スタッフ職(企画、調査等の部門に配置されている者)を企業内の処遇の程度によっては、管理監督者と同様に取扱い、法の規制外においても、これらの者の地位からして特に労働者の保護に欠ける恐れがないと考えらる場合、管理職に適用するとある。
要するに「スタック管理職(部下なし管理職)」は、管理職とすると通達しています。

しかし、労働基準法第41条2号の管理監督者とみなされる判断要素:1.経営者と一体的な立場、2.労働時間に関しての自由裁量、3.相応な賃金待遇から判断して、管理監督者ではないとしている判例もあります。

 

スタッフ管理職とは?

スタッフ

スタッフ管理職とは、(銀行内において、)企画、調査等の部門に配置されているスタッフ職で、企業内の処遇の程度によっては、管理監督者と同様に取扱うことが妥当であるとしている者のことを言います。
いわゆる部下なし管理職もこれに含んでいると思われます。

 

スタッフ管理職が管理職とみなされる理由の一つ

はてなマーク

人事管理上の実態に即しているから

今や何十年も前から一般化している日本の人事制度である職能資格制度において、ある程度の職能資格の等級に上がると管理職となります。
その管理職の中から課長や部長を選んでいくわけですが、同じ等級(グレード)でも、

・課長(ライン)で管理職
・課長でない(非ライン)で管理職(スタッフ管理職)

の様に同じ管理職でも2種に分かれることになります。

その場合、課長は残業代を付けず、課長でない管理職は残業代を付けるとすると同じ等級(グレード)なのに扱いに違いが生じて、社員間の公平感を損なうことになります。
このことからライン管理職(部下あり)も非ライン管理職(部下なし)も一緒に管理職としているのです。

職能資格制度の等級(グレード)の考え方は、旧日本軍の階級制度で言えば、士官(少尉等)以上が管理職で、小隊長以上は士官(管理職)から選び、士官(少尉)だけど小隊長である人もいれば、少尉だけの人もいるというイメージになります。
(そもそも職能資格制度自体が軍の階級制度を模倣したともいわれます)

 

スタッフ管理職に関係する具体例

虫眼鏡の中に判例

判例:日産自動車事件

大企業の課長職の管理監督者性を否定した判例です。
(概略説明)
スタッフ管理職に関する行政解釈との違いを明確にし、労働時間の自由裁量、相当な賃金待遇はあるが、経営者と一体的な立場が否定され管理職でないとされました。

参考:日産自動車事件 横浜地判平31.3.26

判例:HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド事件

部下なし・スタッフ職の管理監督者制を否定した判例です。
(概略説明)
労働時間を管理されず、報酬が相当に高額であったが、業務上の裁量権は限定的で、部下もなく労務管理上の裁量権は皆無であったことから管理監督者に当たるとはいえないとされました。
参考:HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド事件 東京地判平23.12.27

各判例の特徴としては、最高裁判例なし、だいたい管理監督者性が否定されているですね。

 

まとめ

スタッフ管理職(大きな意味あいで部下なし管理職)は、だいたいの日本の会社が採用している職能資格制度のもとでは、人事管理上管理職と定義していかざるを得ないと思われます。
しかし、労働基準法上は厳密には管理監督者とは見なされない傾向なので、実際に裁判をすると否定されるという感じですね。

ここで思うところは、通常はスタッフ管理職(部下なし管理職)でまあまあ報酬ももらっているし、いいかなあと思って労働していて、日産自動車事件の様にもし過労死等となって、遺族が会社に対し訴えるとなったら、安全配慮義務違反での損害賠償請求だけでなく、管理監督者性の否定による未払い残業代請求でも訴えられる可能性があるということですね・・

労務関係の世界では、なんだか厳密にコンプライアンスを追うといろいろと矛盾や問題点が出てきますね・・
でも、結構このスタッフ管理職(部下なし管理職)って多いと思います。

参考になれば幸いです。

参考文献:
・通達「昭和63.3.14.基発150号」「昭和52.2.28.基発104号の2」「昭和52.2.28.基発105号」
・濱口桂一朗「新しい労働社会ー雇用システムの再構築へ」(株式会社岩波書店,2009年)
・沼田雅之「雇用環境の変化と管理監督者ースタッフ職の管理監督者性を中心に」(独立行政法人労働政策研究・研修機構,2020年)
・労働法制特別委員会委員坂本貴生(67期)「近時の労働判例 第82回横浜地裁平成31年3月26日判決」(東京弁護士会)

コメント

タイトルとURLをコピーしました