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社労士

朝の始業前準備時間って、仕事の時間にならないの?【労働時間の考え方】

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会社の始業時間は決められていますが、その前に仕事の準備と称して、ほぼ仕事みたいなことをすることになっている場合って多いのではないでしょうか?

掃除、体操、作業着への着替え等(上司の机拭きは、今時ないか?)。

それらの作業は当然の事の様に、仕事を始める準備作業だからと言って、始業前にやらなくてはならない事になってはいないでしょうか?

ふと、それらの作業時間は、本当に仕事時間でないのでしょうか?これらの作業時間に対し何らかの対価(賃金)をもらえなくて良いのでしょうか?

と考えた事はないでしょうか?

そこで、社会保険労務士であるこのしま丸ねこが、労働基準法に馴染みがない方でもわかりやすいように、労働時間について解説します。

この記事を読めば、朝の始業前の準備時間の扱い、労働時間について、全て分かります。

社会保険労務士である私が普段調べ、扱っている知識を凝縮しました。
特に朝の始業前の準備時間の扱いについて知りたい方は最後まで読んで下さい。

 

この様な方へ向けて、参考になれば
・朝の始業前準備時間って、残業時間にならないのか知りたい方
・朝の始業前準備時間も残業代もらえるのではないのと思っている方
・仕事の時間とそうでない時間ってどう違うのか疑問に思っている方

 

黒ねこ
黒ねこ

今の会社は始業時間前に、掃除や体操をしなくてならないけど、この間寝坊して、これらの作業ができなかった。始業時間には間に合ったのだけど。その時に、上司から始業時間前の作業を遅刻したと怒られてしまった。
しかし、これら作業に残業代ももらっていないのに怒られるなんて何か理不尽な気がするんだけど、どうなのかなあ~??

しま丸ねこ
しま丸ねこ

そうだね!今回はその辺のこと、「労働時間」について、解説するよ!

朝の始業前準備時間は、仕事の時間(労働時間)になります

通常は労働時間として扱うことになる場合がほとんどです。

ただし、すべての場合が労働時間になるというわけではなく、基本的な要件を満たしていれば労働時間になります。

よって、労働時間になるのですから、当然その時間に働いたならば、残業代(時間外労働代)を払わなくてはなりません。

それでは、労働時間とは何か、又その具体例等を以下に解説していきます。

 

労働時間とは?

workの上に時計が乗っている

労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間です。

労働者は、その時間(労働時間)を労働するために使用されることになります。
ただし、その時間(労働時間)に直接的な労働をしていなくても、使用者の指揮命令下に置かれていれば、労働時間です。

使用者の指揮命令下とは、使用者の明確な指示下だけではなく、黙示の指示下(直接的に指示してはいないけれど、そうすることが当然となっている場合等)も指揮命令下となります。

業務の準備行為等を事業所内で行うことを義務付けられている又は、余儀なくされている場合、これを所定時間外において行うものとされていても、特段の事情がない限り、使用者の指揮命令下に置かれていると評価され、その準備行為等に要した時間が社会通念上必要と認められるものであるなら、労働基準法の労働時間に該当する。

参考:労働基準法32条

 

労働時間に含まれる具体例

パペットがexampleを示している

では、グレーラインになっている様な一見労働時間ではなさそうに見えますが、実は労働時間になる具体例を見ていきましょう。

作業着に着替える時間

制服、作業着着用が仕事をする上で決まっている事(義務)ならば、労働時間となります。
しかし、着用が任意(自由)の場合や自宅からの制服、作業着着用が認められている場合、着用にプラスして、お化粧等をする場合は労働時間に含まれません。

朝の体操

仕事前に必須とされ、全員参加とされている場合は、労働時間となります。しかし、任意(自由)参加の場合は、労働時間に含まれません。

始業時間前の掃除

事業所内で仕事する上での準備行為等であり、義務付けられ、余儀なくされ、必要とされている場合、労働時間となります。

始業時間前の朝礼

仕事上必須で、参加義務がある場合なら、労働時間となります。しかし、任意(自由)参加の場合は、労働時間に含まれません。

始業時間に始める朝礼
これはよくあり、一般的でどこの会社でもありそうですが、前項の作業着着用が労働時間に含まれるならば、もし始業時間にタイムカードを打刻して、作業着に着替えて、朝礼の場所まで行った場合、始業時間丁度に始まる朝礼には間に合わないのではないでしょうか?
この朝礼の遅刻をもってして、規律違反とは言えないのではないでしょうか?
(タイムカード上も始業時間に打刻しているので、遅刻ではないが)

ならば、朝礼は始業時間の5~10分後に始めるとかしないとダメなのではないでしょうか?
と言っても、だいたいの会社は朝礼を始業時間と同時にやっていると思いますが。

研修

仕事上必須で、参加義務がある場合、業務指示がある場合、労働時間となります。しかし、任意(自由)参加の場合は、労働時間に含まれません。

直行直帰、出張時の移動時間

移動中に業務指示、業務に従事、移動手段の指示がなく、自由利用で良い場合は、労働時間となりません。

・取引先へ行く時に、自宅から取引先へ直行する場合の移動時間は、労働時間となりません。
・自宅から直接出張先に移動する場合に、仕事日の前日が休日で、前泊する場合の移動時間は、労働時間になりません。
*就業規則へ規定があるかどうかも判断基準となります。

 

労働時間解説の根拠

ノートに赤鉛筆で、evidennceと書いてある

判例:三菱重工長崎造船所事件

(概略説明)
始業時刻前に、作業着を着て、業務準備作業をすることを義務付けられ、この作業準備時間等は就業時間に含まれていなかった(残業扱いされていなかった)事業所について、

労働者が就業を命じられた業務の準備行為を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又は余儀なくされたときは、始業開始前(所定労働時間外)において行うものとされていても特段の事情がない限り使用者の指揮命令下にあると言え、要した時間が社会通念上必要と認めれらる限り、労働基準法上の労働時間に該当する。

とされた判例です。

参考:三菱重工長崎造船所事件(最判第1小平12.3.9)

厚生労働省

厚生労働省からも労働時間の考え方のパンフレットが出ています。

参考:厚生労働省 労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い

 

まとめ

朝の始業前準備時間は、仕事の時間(労働時間)になります

仕事の時間(労働時間)になる具体例としては、

・作業着に着替える時間
・朝の体操
・始業時間前の掃除
・始業時間前の朝礼
・研修
・直行直帰、出張時の移動時間

となります。

ただし、この作業に「特段の事情がない限り」「要した時間が社会通念上必要と認めれらる限り」とありますので、すぐに済む作業をわざと、だらだらと行って、時間がかかったから、これも労働時間と言うのは問題があります。

昔よく上司から、
「始業時間前に全ての準備と整え、始業時間になったらすぐに仕事を始められる状態にするように」と言われましたが、
実は、労働時間の考え方からすると間違っている様です。

もしその言葉をそのまま実行したら、残業代が発生するか、残業代が支給されていないならば、未払残業となります。

昔はそんなこととやかく気にせず、アバウトだった様な感じですが、
今はコンプライアンス重視となっていますので、
ある程度考えていく必要があると思います。

参考になれば幸いです。

参考までに、労働時間に関係した記事として、休暇休憩時間のことも書いています。

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