世間では有給休暇取得が5回/年必須になったようですが、なかなか有給休暇を使って会社を休める雰囲気ではありません。
上司には病気・怪我の時のために、有給休暇をあまり使うなと言われています。
なんか海外では、結構何週間も休んでいる様ですが?
日本の有給休暇・休みって少ないのでしょうか?
と考えたことはないでしょうか?
そこで、このしま丸ねこが社労士の扱う分野の労働基準法に絡め、有給休暇について、国際標準、国際比較を含め解説していきます。
・外国ではどのくらい休みがあるのか知りたい方
・有給休暇に国際標準ってあるのか知りたい方
最近有給休暇取得が5回/年必須になった様だし、有給休暇をもっと積極的に取ってみようと思ったが、上司から病気になった時のために、有給休暇はあまり取るなと言われた。
もっと休みたいんだけど、なかなか有給休暇が取れる環境ではないよ。
ふと日本の休みって、外国に比べたらどうなんだろう?と思ったりして?
何か欧米の国なんかは何週間も休みを取るようだけど、日本の休みって少ないのかなあ?
そう言うことなら、今から有給休暇、祝日、休みの日数の国際比較を解説するよ!
有給休暇の国際標準ってあるの?
まず日本の有給休暇は国際的に見てどうなのか、多いのか少ないのかを見ていきます。
国際的に有給休暇を見ると国際標準と言うものが定められています。
それが「ILO国際標準 第132号条約(年次有給休暇)」と言うものです。
ILO国際標準 第132号条約(年次有給休暇)とは?
ILOとは、国際労働機関(国際連合の専門機関の一つ)です。
(International Labour Organization、略称:ILO)
国際労働基準を制定して、世界の労働者の労働条件や生活水準の改善を目的にする国際連合の専門機関です。
そのILOが制定している条約の中に、
第132号条約(年次有給休暇)、正式名称:年次有給休暇に関する条約(1970年の改正条約)があります。
条約内容の概要は、
「前略 労働者は1年勤務につき3労働週(5日制なら15日、6日制なら18日)の年次有給休暇の権利をもつ。休暇は原則として継続したものでなければならないが、事情により分割し、その場合でも分割された一部は連続2労働週を下らないものとされる。
休暇給与は先払いとし、祝日や慣習上の休日は年次有給休暇の一部として数えてはならない。また、病気やけがによる欠勤日は、一定の条件下で年休の一部として数えないことができる。後略」(出典:サイト名:ILO国際労働機関/1970年の有給休暇条約(改正)(第132号))
要するに、年次有給休暇の国際標準は、15日の有給休暇(週5日勤務の場合の1年間の取得日数)ならば、15日の連休で取得しなければならない。
分割取得したとしても、連続2労働週すなわち10日の連休(土日含めると14日の連休)でなければならないと言っています。
又、病気やけがの場合は、この年次有給休暇での休みとしないとしています。
(別の傷病休暇等で取る)
日本の対応状況は?
この条約に日本は批准(同意)していません。
すなわち、日本の年次有給休暇制度は、国際標準を満たしていないのです。
有給休暇・祝日・休み:日数の国際比較
(有給休暇取得率は、サイト名:PR TIMES/エクスペディア/世界16地域有休休暇・国際比較2021発表!からの数字となります)
この様に国際比較表を作ってみました。
この表からわかる通り、祝日、年末年始・夏期休暇等の休日を含めれば、日本も他国に遜色ない休日数になっています。
ただし、大きなポイントは、他国にはある傷病休暇(sick leave)が、日本にはないことです。
それでは、以下にこれら比較表を個別に解説していきます。
フランスの休暇・休日
作成した表から、有給休暇付与日数は30日、有給休暇消化率は83%なので、有給休暇取得日数は25日になります。(有給休暇消化率は100%とも言われていますが)
もちろん、この有給休暇の使い方は、ほとんどILO国際標準に準拠して連続した3労働週となっています。
すなわち、あこがれの21日以上の連休です。
それに祝日が加わり、合計休日は36日となります。
ただし、この有給休暇は日本と違って傷病休暇(病気や怪我で休む日)は含まれず、あくまでもVacationの休暇です。
フランスでは、傷病休暇(sick leave)は、通常の有給休暇とは別にしています。
傷病休暇の内容は、有給休暇とは別に、ある程度の期間、従業員の傷病時の給与補償があります。
(その代わり従業員が本当に傷病状態にあるかどうか雇用主が確認することになりますが)
よって、有給休暇と傷病休暇を合計した総合計は、有給休暇取得日の36日よりも遙かに多いと考えられます。
アメリカの休暇・休日
作成した表から、有給休暇付与日数は10日、有給休暇消化率は80%なので、有給休暇取得日数は8日になります。
それに祝日が加わり、合計休日は19日となります。
ここまでだと一見他に比べて休日が少ない様に見られますが、
アメリカの場合、会社ごとの労働者の雇用契約によって、有給休暇付与はバラバラで、人によって、休みなしで働いている場合や結構休んでいる場合まちまちです。
ただし、まとまった連休をとっている人は多い様です。
又、アメリカの場合も有給休暇は、傷病休暇(病気や怪我で休む日)は含まれず、あくまでもVacationの休暇です。
アメリカでの傷病休暇(sick leave)も通常の有給休暇とは別にしています。
傷病休暇の内容は、労働者が業務外の健康等上の理由で仕事を休む場合、給与を補償をする制度です。アメリカの州によっても色々と法整備されています。
よって、有給休暇と傷病休暇を合計した総合計は、有給休暇取得日の19日よりも多いと考えられます。(あくまでも労働者ごとに多い、少ないあると思われますが)
日本の休暇・休日
有給休暇付与日数は20日、有給休暇消化率は60%なので、有給休暇取得日数は12日になります。
それに祝日16日と休日(年末年始・夏期休暇等)3~5日が加わり、合計休日は31~33日となります。
この合計休日数だけをみるとフランス36日と比べあまり遜色がない様に思われます。
(有休休暇だけだとフランス25日に比べ、10日以上少ないですが、祝日+休日を入れると遜色ない日数となります)
しかし、今までに説明してきた様に、日本の有給休暇は傷病休暇(病気や怪我で休む日)も含んでいます。
(日本に傷病休暇(sick leave)と言う制度は公にありません)
よって、仮に傷病休暇(sick leave)で取得する日数が10日以上だとすると日本の実質休日数は、21~23日となり、フランスと比べ10日以上も少ないと言えます。
じゃあ!今の有給休暇制度って、戦後すぐでは現実的だったけど、この令和の今では非現実的なのでは?
まとめ
各国の休日日数をまとめると
(アメリカ)合計休日数:19日+傷病休暇有(会社、州、個人ごとに違い有)
(日本)合計休日数:31~33日+傷病休暇なし
となります。
休日日数だけだと日本はそんなに休みが少ないわけではないと思われますが、
それに傷病休暇なしという状況を加えると、全体的な休日数は少ないと言わざるを得ません。
又、連続した休暇がとりにくいというのもどうなのでしょうか?
以上のことから、やはり、一般のイメージ通り、日本は休みが少ないと言えます。
(何度も言いますが、祝日を含めた休日日数だけみると遜色ない様に見えますが)
それだけ、日本人はより多くの時間を使って働いていると言うことですが、
最近言われている様に、なぜ、日本は世界に比べて、所得が低いのでしょうか?生産性が悪いのでしょうか?
普通たくさん働いているのですから、より収入を多くもらって良いのではないでしょうか?
生産性と言う意味では、長時間労働によっても生み出す価値があまり変わらないなら、生産性が悪いといえるのでしょうが。
仕事は時間を多くかければ良いと言うものではなく、
やはり、効率を重視して、少ない時間で、より付加価値を上げた仕事をして、より多く休む(休みたい)ことをしたいところです。
ああ、もっと連続した長期休暇が取りたい。
参考になれば幸いです。
参考までに、休暇に関係した記事として、労働時間、休憩時間のことも書いています。
社会保険労務士です。
2022年9月に登録しました。
行政書士は登録準備中です。
まず副業から始めて、士業開業を目指していきます。
ブログも始めました。
士業を目指している方どうぞよろしくお願いします。
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