兼子仁『新12版 行政書士コンメンタール』
(発行者:木村慎也、発行所:株式会社北樹出版,2022年)
この本は、色々のところから行政書士開業前に必ず読んだ方が良いと言われている本です。
よって、自分もさっそく読んでみました。 読んでみた感想を書いていきます。
参考になれば。
著者は、兼子 仁 先生です。
東京都立大学名誉教授で、専門は行政法の偉い先生ですね。
年齢は、 1935年生まれで、88歳程になります。
ちなみに東京生まれとのこと。
行政書士法コンメンタールとは
行政書士法の条文を逐条解説した書籍です。 この本は行政書士が業務を行う上で、その行う業務の根拠となる法律の条文解説書となっています。
言わば、行政書士はこの法律を知らずして業務活動はできないと言うものです。
その様な意味で、さあ行政書士で開業して業務活動をしていこうとしたら、まずどんな行政書士の実務書より最初に読む本で、この本を理解してから活動することになります。
と言うことで、行政書士の一番の基本書の内容は以下の通りとなります。
本の構成
まず、第1章 総則(第1条ー第2条の2)では、
目的、制度、行政書士の業務、資格等が書かれています。
第2章 行政書士試験(第3条ー第5条)
第3章 登録8第6条ー第7条の4)では、
題名通り行政書士試験と登録に関して書かれています。
第4章 行政書士の義務(第8条ー第13条の2)では、
法的義務他、行政書士の活動をしていく上での義務が書かれています。
第5章 行政書士法人(第13条の3ー第13条の21)
第6章 監督(第13条の22ー第14条の5)
第7章 行政書士及び日本行政書士会連合会(第15条ー第18条の6)
第8章 雑則(第19条ー第20条)
第9章 罰則(第20条の2ー第26条)
とそれぞれ題目に則して書かれています。
上記に挙げた章のなかで、特に行政書士の開業前後時に重要になるところは
第1章 総則(第1条ー第2条の2)、 第4章 行政書士の義務(第8条ー第13条の2) になります。
以下それらの章の内容を解説していきます。
1.第1章 総則(第1条ー第2条の2)について
(第1条) ここではまず行政書士の目的を定め、 (第1条の2、2) 業務(何をすべきか)を明確にしています。
行政書士の業務とは、 官公署提出書類の作成、 権利義務・事実証明に関する書類の作成 これらは行政書士の独占業務とされていますが、他の法律において制限されていない範囲においてです。
又、他士業との共管業務と解されるものもあります。
共管業務とは、他士業も同じ様に独占業務としている業務で、他士業との競業が予想される業務です。
例えば、
・非紛争的な契約書・協議書類の作成は、弁護士との共管業務と解されます。
・税務に付随する財務諸表等の作成は、税理士との共管業務となります。
行政書士が行ってはいけない他士業の独占業務も明確にしています。
例えば、
・「法律事件」である訴訟・調停に関して代理人として書類を作成することは、代理人弁護士の原則的な独占業務となります。
・労働・社会保険諸法令に基づく申請・届出書、審査請求書等や帳簿書類を作成することは、社労士の原則的な独占業務となっています等。
これらを行政書士が行うと 業際問題が発生します。
業際問題とは、士業が他の士業の独占分野を無資格で行うと言うことです。
(第1条の3、一、二、三、四、2)で、 行政書士の他業務について、以下の通り説明しています。
2.行政書士が作成した官公署に提出する書類に関わる不服申し立ての手続き代理及び手続き書類作成
3.行政書士が作成することができる契約、書類の代理作成
4.行政書士が作成することができる書類の作成についての相談に応じること
*2.については、特定の研修課程を修了した特定行政書士に限る。
ここでは、官公署書類提出手続および許可申請、契約、書類の代理権があげられています。
又、行政不服申立ての代理権も法定されています。
これらは他士業の専管独占条項、特に弁護士法72条に関係してくるところです。
2.第4章 行政書士の義務(第8条ー第13条の2)について、
ここであげられていることは、
(第9条)帳簿の備付及び保存 帳簿備え付け義務
(第10条)行政書士の責務 行政書士が全うすべき職業倫理
(第10条の2)報酬の額の掲示等 報酬の額の掲示と価格競争制限の禁止
(第11条)依頼に応じる義務 業務依頼を原則的に応諾すべき義務
(第12条)秘密を守る義務 守秘義務
(第13条)会則の遵守義務 会則遵守義務
(第13条の2)研修 研修必須
です。 この様に行政書士が普段業務を行う上での基本的な決まり事をあげています。
言わば、行政書士で仕事をするなら当然知っておくべきことです。
この様に前項1.での業務活動の明確化により、業際問題を意識させるものと違い、この2.では行政書士の守るべき行動規範的なものを明示して、法律で定められたこれらを守らないと行政書士会からの懲戒対象となると言うことを、行政書士で開業する時に初めに肝に銘じることを意識させます。
まとめ
以上の様にこの本に書かれていることは、行政書士の業務活動をする上で当然知っておくべき事です。
よって、だれもが行政書士で開業するならまず始めに読む本と言っているのです。
特に1条の2~の独占業務の範囲、共管業務の範囲、業際問題の危険性は肝に銘じて、業務活動をしていかなくてはならないことになります。
やはり、行政書士を開業するにあたり、だれもがこの本を最初に読むべきと言う理由がわかります。
参考になれば、幸いです。
社会保険労務士です。
2022年9月に登録しました。
行政書士は登録準備中です。
まず副業から始めて、士業開業を目指していきます。
ブログも始めました。
士業を目指している方どうぞよろしくお願いします。
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